今回は、少し前にゲームパブリッシャーとZoomで話したときの体験について書いてみたいと思います。これはどちらかというと、当時の印象と、そこから1年経った今の視点の両方から振り返る内容です。
僕が話したのは2社のパブリッシャーで、一方はあまり知られていないインディーパブリッシャー、もう一方は世界的には展開しているけれど、日本ではあまり名前が知られていない会社でした。
当時はまだ僕自身、インディーゲームやその市場について詳しくなかったんですが、自分の作ったゲームを紹介したところ、「Zoomで話しませんか?」という連絡がありました。こちらから商談を積極的に持ちかけたわけではなく、向こうからの提案だったんです。
ところが、実際に話してみると、どうも雰囲気がよくなかった。特に印象的だったのは、先方の担当者が終始どこか不機嫌な様子だったことです。僕のゲームが期待に合わなかったのか、少し否定的な態度を感じました。それならなぜ話したがったのか、今でも少し疑問に思っています。
振り返ってみると、当時の僕はSteamのユーザー層についてあまり理解できていなかったんですよね。Steamでゲームを買う人の多くは、いわゆる「コアゲーマー」や「ゲームマニア」。ゲームに強いこだわりを持った人たちです。そうしたユーザーに向けたゲームをパブリッシャーは求めていたんですが、僕はその感覚をちゃんと掴めていませんでした。
おそらくそのズレが、話が噛み合わなかった一因だったと思います。「この人、ゲーム市場のことをわかってないな」と思われたのかもしれません。
もう一つ感じたのは、パブリッシャー側の話し方が少し“うま過ぎる”というか、都合のいいことばかり並べていた印象です。たとえば「あなたはゲーム制作に集中してください。宣伝や販売はすべて私たちがやります」というような言い回しですね。
もちろん、デベロッパーにとっては心強く聞こえるかもしれません。でも、今思えば、その言葉の裏には「とにかく契約に持ち込みたい」という思惑もあったのではないかと感じています。
パブリッシャーと契約すると、利益の3〜5割がパブリッシャー側に入ることもあると言われています。場合によってはゲームそのものを譲渡(著作権を含めて)する契約になることもあり、そうなると開発者の自由は大きく制限されます。
だからこそ、パブリッシャーと話すときは、すぐに契約を決めず、冷静に検討することが大切です。相手の言葉を鵜呑みにせず、自分の立場や作品の価値をしっかり理解してから判断するべきだと、今は強く思います。