最近、個人でゲームを作っている人が、開発の初期段階からTwitter(X)やYouTubeなどのSNSでその内容を積極的に公開しているのをよく見かけます。まだ完成もしていない段階で、アイデアやスクリーンショット、プロトタイプの動画まで投稿している。これはとても興味深い現象です。
というのも、ゲーム会社で働いていたら、そんなことはまずありえません。未完成のゲームを外部に見せるなんて、情報漏洩にもなりかねないし、他社に真似されるリスクもあるからです。ゲームの内容は立派な「企業秘密」です。たとえトレーラーやティーザー映像を公開することがあっても、それは緻密に計画されたマーケティング戦略の一部。肝心な中身は慎重に伏せられます。
でも、個人開発者はまるで逆。どんどんSNSに投稿します。なぜなのでしょうか?
「パクられる」という意識がない?
一つ思うのは、個人開発者の多くは「自分のゲームが他人にパクられるかもしれない」という発想自体があまりない、あるいは、あえてそこを気にしていないのでは?ということです。
むしろ、「作ってます!」とSNSで発信することで、他の人に興味を持ってもらったり、開発仲間や応援してくれる人を見つけたりすることを優先しているように見えます。つまり、広めることそのものが目的であり、プロモーションの一環でもあるんですね。
これは会社のように「利益」や「競争」を強く意識している立場とは、かなり価値観が違います。
そもそも「パクられる価値がある」とは思っていない?
また、現実的な話として、個人開発のゲームが企業にパクられるような事例はほとんど聞きません。というのも、個人ゲームは大ヒットする保証がないし、市場規模も小さいことが多い。企業としては、わざわざ個人のゲームアイデアを盗むより、自社で企画開発した方が早いしリスクが少ないのです。
そう考えると、個人のゲーム開発者があまり「盗まれるリスク」を気にせずSNSで公開しているのも納得できます。
むしろ「共感」や「フィードバック」を求めている?
多くの個人開発者は、SNSでの発信を通じて「誰かに見てもらいたい」「反応がほしい」「仲間を見つけたい」と思っているように見えます。そういう意味では、ゲームを作ることと、それを共有することがセットになっているのかもしれません。
これは、ある意味とても現代的で、人間的な行動です。リスクよりも、楽しさや繋がり、自己表現を優先する。企業とはまったく異なる価値観でゲームを作っているからこそ、その開発スタイルにも違いが出るのでしょう。
最後に
もちろん、「自分のアイデアは誰にも見せたくない」「完成するまで秘密にしたい」という個人開発者もいます。公開するかどうかは本当に人それぞれです。
でも、SNSで積極的に公開する人を見ると、「こんなにも考え方が違うんだな」「ここに面白さがあるな」と感じます。個人と企業、それぞれの立場だからこそ見える景色の違い。そこに注目するのも、ゲームを見るうえでの楽しみのひとつかもしれません。